半導体装置~基礎知識③(スパッタリング装置)

スパッタリング装置とは、真空中でターゲット材料(スパッタリングターゲット)にイオンを衝突させ、その材料を飛び散らせて基板上に薄膜を形成する装置です。このプロセスは「スパッタリング」と呼ばれ、半導体、ディスプレイ、太陽電池、ハードディスクなどの製造に広く利用されています。

1.スパッタリング装置の主な構成

  1. 真空チャンバー:薄膜形成を行うための密閉された空間。
  2. ターゲット材料:成膜するための材料(金属、酸化物、窒化物など)。
  3. 基板ホルダー:薄膜を形成する基板を保持する部分。
  4. プラズマ発生装置:ターゲットにイオンを衝突させるためのプラズマを発生。
  5. 電源装置:ターゲットへ電圧を供給(DC、RF、パルス電源など)。
  6. ガス供給システム:スパッタリング用のアルゴン(Ar)や反応性ガス(O₂、N₂)を供給。
  7. 排気システム:高真空を維持するためのポンプ(ターボ分子ポンプ、ロータリーポンプなど)。

2.スパッタリング装置の種類

スパッタリング装置には、目的や材料に応じたさまざまな方式が存在します。

① DCスパッタリング(直流スパッタリング)

  • 概要:ターゲットに直流(DC)電圧を印加し、プラズマを発生させる方式。
  • 用途:導電性の金属材料(Al、Cu、Au など)の成膜。
  • 特長:シンプルな構造で、高速成膜が可能。

② RFスパッタリング(高周波スパッタリング)

  • 概要:ターゲットに高周波(13.56MHz)を印加してプラズマを発生させる。
  • 用途:絶縁性材料(SiO₂、Al₂O₃、ZnO など)の成膜。
  • 特長:非導電性の材料も成膜可能だが、成膜速度はDCより遅い。

③ マグネトロンスパッタリング

  • 概要:ターゲットの背面に磁場を発生させ、プラズマを局所的に集中させる方式。
  • 用途:半導体、ディスプレイ、ストレージ用の薄膜形成。
  • 特長:イオンの密度が高く、成膜効率が向上し、ターゲットの消耗が均一。

④ 反応性スパッタリング

  • 概要:アルゴン(Ar)ガスに加え、酸素(O₂)や窒素(N₂)を導入し、化学反応を起こしながら成膜。
  • 用途:酸化物(TiO₂, ITO)や窒化物(Si₃N₄, TiN)の成膜。
  • 特長:材料の組成を制御しやすく、多様な機能性膜を形成可能。

⑤ パルスDCスパッタリング

  • 概要:直流電源にパルスを加え、ターゲット表面の電荷蓄積を防ぐ方式。
  • 用途:金属酸化物や窒化物の成膜。
  • 特長:DCとRFの中間的な特性を持ち、高速で絶縁材料を成膜できる。

⑥ HiPIMS(High Power Impulse Magnetron Sputtering)

  • 概要:高電力の短パルスをターゲットに印加し、高密度プラズマを発生。
  • 用途:密着性・硬度の高い膜形成(DLC、TiN など)。
  • 特長:成膜された膜の密度が高く、高品質なコーティングが可能。
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